恋の公倍数(受験生+塾講師)
「よぉ、新入りか?数学が苦手だって顔に書いてあるけど、理由は?」
塾の申し込みをしに来たついでに授業を受けた。
一番後ろの席に座ると、数学の授業をしていた先生がクルっと振り向いた。
何、コイツ。
いきなりそんなことを言われても答えられない。
視線をそらす。
やっぱり塾なんか嫌だ。
親に無理矢理入れられた塾。
早速明日からサボッてやる。
知らない中学の子がいっぱいいて、ジロジロ見られるのもウザイ。
中学でも問題児扱いされている私は、塾に来たって同じなんだ。
「理由がわかれば苦労しません」
落書きで汚れた白い机をにらみつけながら答えた。