恋の公倍数(受験生+塾講師)
「良かったね。美春!まーちゃんに名前呼んでもらえたじゃん」
「嬉しいけど・・・なんだか苦しいよ」
4人部屋に荷物を置き、私と千夏の他の2人と軽く挨拶をした。
修学旅行気分で楽しんでいたけど、これは勉強会。
部屋でくつろぐ時間もないまま、お風呂へ案内される。
お風呂でゆっくり恋話をすることもできず、慌てて髪を乾かす。
そのまま夕食へ。
長い机に並んだ食事は、質素だけどとても美味しかった。
まーちゃんを探す。
どこにもいない。
佐藤先生を探す。
どこにもいない。
「池田もいない?」
「うん。先生だけで会議かなぁ」
池田もいないと知り、私はほっとした。
勝手に妄想してしまう。
こっそり抜け出して仲良く話しているまーちゃんと佐藤先生。
まだまだ子供な私は目に見えるライバルのことしか頭にない。
本当のライバルは佐藤先生なんかじゃないのかも知れない。
見たこともない女の人が、まーちゃんの心の中にはいるのかも知れない。