恋の公倍数(受験生+塾講師)
「いい答えだ。お前が数学が苦手なのは、苦手だと思ってるからだ。嫌いな相手から嫌われるのと一緒で、数学もお前を嫌ってる」
何コイツ。
本当にわけわかんない。
無視無視。
絶対明日はサボってやる。
「何しにここへ来た?少しでも成績が良くなりたいのなら、とにかく授業を受けろ。さぼるなんて考えるな」
バレてんじゃん。
ゆっくりと顔を上げた。
「やっと目を見てくれたな。俺、坂ノ上雅広。よろしくな」
塾の講師って、真面目そうな人ばかりだと思った。
申し込み手続きをした先生も七三分けのオヤジだったし、すれ違った先生もみんな絵に書いたような真面目そうな人だった。
らしくない。
全然、私の中の『先生』ってイメージと違った人。
「先生ぽくねー」
ぼそっと呟いた声に、異常なほど反応する。
「だろー!!良く言われるんだよな。でも俺、かなりの腕前だから。信じてついてきな」