恋の公倍数(受験生+塾講師)
受験まであと2カ月を切っている。
「来週から冬季合宿だな。お前も参加だろ!」
頭を抱えて公倍数の問題を解いている私の頭上で、声がする。
「さぁね。ダルいから行きたくない」
思ってもいないことを言ってしまうのも
私の悪い癖。
誰かに気付いて欲しくて、
誰かに手を引いて欲しくて。
「冬季合宿が勝負だって言ってるだろ!お前が参加しないと言うなら俺も参加しない」
本気になって
真正面からぶつかってくれる人。
唯一、私が心許せる人。
「あいよー!そこまで言うなら参加するよ。まーちゃんが参加しないと女子が泣くからね」
まーちゃんは、よしよしって私の頭を撫でた。
「合宿までにもうちょっと黒くしようね、髪・・・」
うん。
する。
真っ黒にしてもいい。
まーちゃんがそれで喜んでくれるなら。