それでも君を愛してる。
第一章
灰色
「俺にどうしろと。」
「……。」
今年に入って何回目だろうか。
中庭の真ん中。
鋭い目をもう何番目の彼女かも知れない少女に向けた陸(リク)が、吐き出す様にそう呟いた。
陸は背が高く筋肉質で、黒髪の先をジェルで躍らせた短髪が良く似合っている。
奥二重の瞳は横に長く、伏せた睫が色っぽく影を作っていた。
外見からして確かに、モテルという事は良く分かる。10人に10人が「格好いい。」と言うだろう。
けれど…
「最初に言ったよね、あんたは一番にはなれないって。」
振り方にも種類があると思う。
たまたまだとしても、こういう現場を目撃するのは胸が痛む。
木陰に寝そべり居眠りをしていた雪月(セツキ)は、心の中でそうため息をついた。
「最低!!」
叫ばれた声。
案の定ひっぱだかれて、陸は頬をさする。
「いてぇ。」
色黒の肌が、そこだけほんのり赤く色を変えていた。