それでも君を愛してる。
「自業自得。」
「………。」
どこからか聞こえたその声に気がつき、陸は顔を歪めて振り返る。
木漏れ日が影を作るその木々の真下で、寝そべった少女の白い足元だけが覗いて見えた。
「盗み聞きか。悪趣味だな。」
「お兄ちゃん。」
「……。」
「その内刺されんよ。」
「……。」
無視かよ。
のっそりと雪月が体を起こした時には、もう陸の姿は影も形も残されては居なかった。
ただ校舎と中庭を隔てる、硝子張りの扉だけが半分開いたままになっている。
雪月はその大きな目を細めた。
そして生まれつき赤毛の髪を垂らして、そっと顔を伏せる。
長い絹の様に美しい髪が、風で靡いている。
その度に表情を無くした雪月の顔が覗いた。
こういう時、どんな顔をすればいいのか分からない。