傷付け合うわたしたち
その日の夕方、またさっちゃんのお母さんから電話があった。
「ハナちゃん、今日はごめんね?あのね、あの子久しぶりに学校行くので緊張してたみたいで……。申し訳ないけど、あの子が学校に慣れるまで、ハナちゃん1日ずっと一緒にいてくれないかしら?」
わたしはさっちゃんのお母さんに言った。
「さっちゃんと電話代わってもらえますか?」
「……ちょっと待っててね」
電話口でさっちゃんを待っていた時、電話の向こうでなにやら揉めているような声が聞こえた。
しばらくして、電話口に出てきたのはさっちゃんのお母さんだった。
「ごめんなさい、あの子今、電話に出たくないって言うの……」
困惑したようなさっちゃんのお母さんの声に、わたしは答えた。
「ごめんなさい、おばさん。わたし、さっちゃんときちんと話も出来ないのにずっと側にいる自信は無いです。さっちゃんに「電話ください」と言ってください」
「……ごめんね」
「わたしのほうこそ、本当にごめんなさい……さっちゃんからの電話、待ってます」
そう言って、わたしは電話を切った。
さっちゃんに強くなってもらいたかった。
このままじゃダメだと、わたしは思った。
さっちゃんの不安な気持ちを思いやらず、たださっちゃんに強くなることをわたしは求めた。
さっちゃんに変わって欲しいと思った。
「自分が変われば、周りも変わるから」そう言いながら、わたしは自分が変わらなくてはいけないことに気が付かなかった。