キャンパス・ダイアリー
「どうした?固まっちゃって」

「いや、なんでもない…」



志願書にはたしかに斎藤さんの名前と印鑑、さらには上野の名前と印鑑まで…。


残るは異動先ゼミの教授の署名と印鑑のみ。



「斎藤さんって知ってる?派手めな子だけど…」

「う…うん…ま…まぁな…」



これは…たしか異動先の教授は特別な理由がない限り断れないんだよな?


転勤とか、そういう理由がない限り…。



「受け入れてくれる?じゃないと斎藤さん未亡人になっちゃうよ」

「そうだな…」



『特別な理由』なんて思い付くわけもなく…俺は手を震わせながら書類に署名した。
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