キャンパス・ダイアリー
後ろからは佳代の声が小さく響いてきた。

振り向かないぞ。

好きでもなんでもない女なんて興味ないんだ…。



駐車場に着いた頃には、佳代の声は聞こえなくなっていた。

でも、違う人の声が聞こえた。



「先生…?」



橋本だった。



「よぉ…これから帰るのか?」

「はい!さようなら!」

「気をつけて帰れよ!」




橋本は優しそうな笑顔を見せて、走り去った。



突然現れた『裏切り者』のおかげで、昔の傷を思い出してしまった俺だったが、橋本の笑顔を見てなんとなく癒された。

橋本の背中が見えなくなるまで、見送り続けた。
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