薔薇姫-バラヒメ-
あたしは、人間界に帰るのに。
レオのお嫁さんなんか、なるはずないのに。
…なのにあたし、マレッタと自分を比べてる。
「…っ、もうやだ…」
何が何だかわからずに、どうしようもないこのモヤモヤを、必死に振り払おうと頭を振る。
コン、コン
小さく扉を叩く音に、あたしは一瞬ドキリとした。
でも…
この丁寧な叩き方は…
「………ロゼ?」
返事の代わりに、ロゼが軽く礼をして、部屋に入ってきた。
ロゼの無表情からは、何が言いたいのかわからなくて、あたしはロゼが口を開くまでじっと待った。
「…メイ様」
「ん?」
やっと口を開いてくれたロゼに、あたしは出来る限り明るく返事を返した。
…目の前にいるのがロゼじゃなかったら、あたしは"フリ"なんか出来てなかった。