薔薇姫-バラヒメ-

あたしは、人間界に帰るのに。


レオのお嫁さんなんか、なるはずないのに。



…なのにあたし、マレッタと自分を比べてる。


「…っ、もうやだ…」


何が何だかわからずに、どうしようもないこのモヤモヤを、必死に振り払おうと頭を振る。



コン、コン



小さく扉を叩く音に、あたしは一瞬ドキリとした。


でも…


この丁寧な叩き方は…


「………ロゼ?」


返事の代わりに、ロゼが軽く礼をして、部屋に入ってきた。


ロゼの無表情からは、何が言いたいのかわからなくて、あたしはロゼが口を開くまでじっと待った。


「…メイ様」


「ん?」


やっと口を開いてくれたロゼに、あたしは出来る限り明るく返事を返した。


…目の前にいるのがロゼじゃなかったら、あたしは"フリ"なんか出来てなかった。



< 107 / 263 >

この作品をシェア

pagetop