薔薇姫-バラヒメ-


「レオ様は、あなたが薔薇姫の子だから、お側に置いているに過ぎませんわ」



…呼吸が、出来なかった。



そんなこと…


とっくにわかっていたはずなのに。



…なのに、苦しい。


胸の奥が、誰かに掴まれたみたいに締めつけられる。



"薔薇姫の子供"



もし…本当に、あたしじゃなかったら?


何かの間違いで、薔薇姫の子供は他にいたら?



それでも、レオは。


あたしのそばにいてくれるの?



あたしは、ただ茫然とマレッタの顔を見つめていた。



…何か、言わなくちゃ。


「そうだね」って、笑わなくちゃ。



でも、それが出来ない。



ただ時計の針が進む音が、静かな部屋に響き渡る。


その音は、あたしの心に突き刺すように響いていく。



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