薔薇姫-バラヒメ-
気づいた時には、あたしは走り出していた。
部屋の扉を閉めずに、勢い良く廊下を駆ける。
「…メイ様?どうなさい…」
「何でもないッ!!」
途中、すれ違ったロゼに声をかけられたあたしは、短くそう言って走り抜けた。
何でもないわけないけど、正直、頭が一杯だった。
正面玄関を出たあたしの目に、彼女が映し出された。
「―――マレッタ!!」
あたしの声にピクリと反応したマレッタは、足を止め、振り返った。
「…何ですの?」
息も絶え絶えに、マレッタの目の前まで近づいたあたしは、乱れた髪を手ぐしで整えた。
呼吸を整え、深呼吸をしたあたしは、マレッタを見据えて言った。
「…勝負、受けるよ」
マレッタは目を丸くしてあたしを見た。