薔薇姫-バラヒメ-

その後ろ姿をしばらく見つめたあと、あたしは近くのベンチに腰をおろした。



何だか…激しく体力を消耗したみたい。


心臓が、まだどきどきと脈打ってる。



気持ちを落ち着かせようと、行き交う人々をぼんやりと眺めていると、誰かに声をかけられた。



「…メイちゃん?」



つい反応して振り返ってから、しまった、と思った。


あたしが知る限りで、あたしを"ちゃん"付けで呼ぶ人なんて、あの人しかいない。



「カイル…さん」



そう。


紅玉祭のときに絡んできた、レオ嫌いの男の人。



あの日、レオが殴った後、完全にのびていたカイルさんを、あたしたちは放っておいた。


だって、ひどい人だったし。


「な…何ですか?」


まさか、仕返しに来たとか?



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