薔薇姫-バラヒメ-
窓枠を蹴った瞬間に、翼を広げる。
そのまま、ふわりと上昇した。
「落ちはしなかっただろ?」
顔面蒼白のメイに、俺はそう声をかけた。
すると、メイは口が利けないのか、唇をぎゅっと真一文字に結んでいた。
城の屋根の部分に静かに着地すると、俺はメイをゆっくりと降ろした。
「…メイ、大丈夫か?」
「………大丈夫じゃないわよ」
俺の服の裾を掴み、屋根の上でバランスを取りながら、メイはなんとかそう答えた。
静かなメイは珍しいな、と顔を覗き込もうとすると、
「―――大体、いきなり飛び降りないでよッ!! 心臓いくつあっても足りないじゃないッ!!」
…と言って、キッと俺を見上げた。
―――いつものメイだ。
思わず俺は苦笑してしまった。