薔薇姫-バラヒメ-
「…あれ、マレッタじゃん」
マレッタに気づいた魔王さまが、片手を挙げて挨拶をした。
「こんにちは。マオ様」
「相変わらずの美人だな。レオにやるのは惜しいくらいだ」
―――ちくん。
魔王さまの言葉に、胸の奥が痛んだ。
マレッタにその気がないって知っても、魔王さまはレオと結婚させるのかな…?
「…メイ」
その時、耳元でネオに囁かれ、あたしはビクッと反応した。
「ネ…」
「静かに。…お前今日カラコン忘れてるだろ。親父に気づかれる前に隠れろ」
マレッタと話す魔王さまを横目で捉えながら、ネオは小さくあたしにそう言った。
「…え?どうして…」
「いいから。早く…」
眉根を寄せるあたしを、ネオが急かした、そのとき。
「おーい、ネオ。お前は誰か相手がいない…」