薔薇姫-バラヒメ-

「魔界じゃ、掟が絶対なんだ。いくら俺が現魔王でも、個人の考えだけで掟を変えることは出来ない」


「…掟を…破ったら?」


答えは予想出来る。


でも、訊かずにはいられない。


「掟を破ったら…どうなるんですか?」


マオさんは、あたしをじっと見つめたあと、ゆっくりと口を開いた。



「…魔界から、追放される」



魔界からの追放。


この世界で、それは…死刑を意味する。



あたしは、体の中の何かがぐらりと傾いた気がした。



…レオとあたしは、結ばれない。


結ばれたとしても…レオが追放されちゃう。



どうすれば。


どうすればいいの?



カタンという小さな音に反応すると、マオさんの姿が近くにあることに気がついた。


さっきまで扉の前にいたのに。


今は…あたしの目の前にいる。



< 206 / 263 >

この作品をシェア

pagetop