薔薇姫-バラヒメ-
「レオ。明日、魔王就任の演説を行なってもらう」
「…もう何だっていい」
俺は、力なく笑うしかなかった。
魔王になれば、忙しくなる。
忙しくなれば…メイを忘れられるかもしれない。
そう、思った。
「お前はそれでいいのか?」
その言葉に、俺の心臓がどくん、と脈打った。
「―――え…」
「このままでいいのか?」
…何、言ってんだ?
親父は一体、何を…
「本当に大事なものなら、掴んで離すんじゃない」
…これは、助言なのか。
わからないけど、そんなの…悔しいほどわかってる。
「わけ…わかんねぇよ」
掴む前に、手を伸ばすのをやめてしまった。
もう…掴めない。
「俺は、そんな情けない息子に育てた覚えはないぞ」
頭上から降ってくる、大きなため息。