薔薇姫-バラヒメ-

こんなときに思い出すのは、やっぱりあなたの顔で。


―――会いたい。会いたいよ。


願ってはいけないことを、こうも簡単に願ってしまう。



あの悪戯な笑顔で、「ばーか」って言って欲しい。


傍にいて欲しいよ…


「芽依、魔界はどうだった?」


揺れた視界の中で、お母さんが笑っていた。


「…最初は、嫌だった。でも、過ごしてくうちに、かけがえのない人たちになってて…すごく、楽しかった」


そう。


馬鹿なあたしは、簡単にレオの嘘に引っかかって。


人生最悪の日だって思った。



…けどね、魔界だって人間界とあまり変わりはなくて。


周りの人たちはみんな、不器用な優しさであたしを包んでくれた。



大切な、大切な人たち…



「…ならレオくんは、約束を守ってくれたのね」


「…え?」


今…レオって言った?


何でお母さんが…



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