薔薇姫-バラヒメ-
「それであなたは…私に何の用?」
出来るだけ、強い口調でそう言った。
彼のことを、魔界のことを…早く忘れてしまいたかった。
無理だって、わかっているのに。
「俺は…お願いがあって来ました」
男の子の言葉に、私は眉をひそめた。
「また、魔界に戻れとか言わないでね?」
「…違います。貴女の…娘さんの、ことで」
―――芽依?
芽依を…芽依をどうする気なの?
「芽依は、渡さないわよ」
ハッキリと、そう言った。
私と彼を繋ぐ…唯一の宝物。
私と同じ運命を、辿って欲しくない。
男の子は、一瞬困った表情を見せたあと、私の瞳をしっかりと捉えた。
「…俺は、メイさんが好きなんです」
突然の告白に、私は耳を疑った。
「…芽依を?あなた、芽依に会ったことがあるの?」
「一度だけ会って…会話をしました」