薔薇姫-バラヒメ-
たった一度。
それなのに…?
「俺は本気です。貴女の子供だからとか、そんなのは関係ない。…メイが好きなんです」
その、羨ましいくらい真っ直ぐな瞳に、私は吸い込まれそうになった。
彼と同じ色の…瞳。
「それだけで…芽依はあげられないわ」
何とか声を振り絞って、私はそう言った。
「あなたが信じられないわけじゃない。ただ、私と同じ目には、あわせたくないの」
「…俺に、時間を下さい」
「………時間?」
私がそう訊ねると、男の子は頷いた。
「メイを、一年後に…一度だけ魔界に連れて行きたいんです。魔界での一年…人間界での一日を、俺に下さい」
「その時間に…あなたはどうするの?」
「メイに、好きになってもらいます」
あまりにも自信のあるような発言に、私は思わず苦笑してしまった。