薔薇姫-バラヒメ-
「そしたらあたし、魔王夫人?うわー、凄いね」
あはは、と笑うあたしの目の前に、レオはスッと手を差し伸べた。
「人間界を離れて、俺と結婚してくれるなら。…この手をとってくれ」
綺麗な紅い瞳は、あたしだけを捉えてくれていた。
人間界を離れるのは、家族に会えないのは、辛いよ。
でもね。
レオと一緒なら、何だって出来る気がするんだ。
魔界と人間界を自由に行き来することは、きっと不可能じゃない。
僅かな可能性があるのなら。
諦めずに、未来を切り開いていける。
あたしは静かに、自分の手をレオの手の上に重ねた。
「…この手を、二度と離さないって誓ってくれる?」
呟いた言葉の返事は、温かいぬくもりと、
「…絶対、離さない」
優しい、誓いの言葉。