薔薇姫-バラヒメ-
「おはようのキス、してやろっか?」
ずいっと近づいてくるレオの顔を、あたしは反射的にひっぱたいた。
パシィン、と見事な音が響き渡る。
「ってええぇぇ!!」
「バカなこと言うからよッ!!」
左頬を押さえて喚くレオを、あたしは顔を真っ赤にして怒鳴る。
「第一、何であんたがあたしの部屋にいるのよ!!」
信じらんないっ!!
「いつまでたってもお前が起きねぇからだろッ」
そこから、ぎゃあぎゃあと言い争いが始まり、ロゼが部屋に入ってきたことに気づかなかった。
「変態オレ様貴族―――!!」
「んだとぉ!?」
「…お二人とも、いい加減になさって下さい」
ロゼの静かな注意に、あたしとレオは口をつぐむ。
…無表情だから、余計に怖い。