薔薇姫-バラヒメ-

「……っ、た…」


顔を上げると、レオとロゼの姿は女の人たちにかき消されていた。


…きっと、あたしが近くにいないのも気づいてない。



急に冷たい風が吹き抜けた気がして、心が虚しくなった。


近くからは、屋台の威勢のいいかけ声や、人々の楽しそうな笑い声が聞こえてくる。



お祭り…


楽しみにしてたんだけどな。



結局あたしは、この世界ではひとりぼっち。


そう考えたら、涙が出てきた。



あたしは唇を噛み締め、重たい腰を上げた。


目の前の集団を一瞥して、そっとその場から立ち去る。



あたしがいなくなっても、レオとロゼは女の人たちと回れる。


お城への帰り道ぐらい、あたしだって覚えてる。



…早く、この場から立ち去りたかった。



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