薔薇姫-バラヒメ-
お祭りへと、笑顔を浮かべながら通り過ぎる人たちの流れに逆らって、あたしは一人、とぼとぼと歩く。
「情けないなぁ…あたし」
ポツリと呟くと、あまりの情けなさに視界がぼやけた。
…逃げてる。
あたし、現実から逃げようとしてるんだ。
異世界に連れてこられて、レオたちに出会った。
だから、レオたちにちょっと甘えてた。
けどさっき、女の人たちにとられちゃう気がして。
我が儘だけど…
構ってて欲しかったんだ。
この世界での…
あたしの居場所が欲しかった。
「………っ」
あたしは、元来た道を引き返した。
今度は、人の流れに沿って走る。
勝手に帰ろうとしたこと、謝ろう。
それで、一緒にお祭り回ろう。