薔薇姫-バラヒメ-
走って、走って。
さっきの場所までたどり着いた―――…
………のに。
「…いないし…」
そこには、誰もいなかった。
あたしがいないこと、気づかなかった?
どうでもよかった?
頭の中で、嫌な考えがぐるぐると巡る。
そんな時、誰かに肩をつかまれた。
「………っ、レオ?」
振り返ると、そこにいたのは知らない男の人だった。
あたしが明らかにため息をついたのを見ると、その人は笑った。
「君、レオの連れ?」
「…えっ?」
レオの知り合い?
そんな疑問が、頭に浮かぶ。
「僕、カイル。レオの友達なんだ」
「レオの……」
友達。
いたんだ、あの性格なのに。