薔薇姫-バラヒメ-

その一言が、何かひっかかった。


「…やっぱり、ですか?」


「うん。レオって、好青年って顔してるけど、悪い噂とかあるし」


あたしは、黙ってカイルさんの話に耳を澄ます。


「メイちゃんもレオが嫌いみたいだし、やっぱ嫌な奴なのかなーって」


「…別に、嫌いってわけじゃないですけど…」


あれ?


何か、ヘン。


この人、レオの友達なんだよね?



小さな疑問が芽生えたとき、辺りの景色に気づく。


知らない間に、屋台がある通りから外れ、人気のない林に入り込んでいた。


「…カイルさん?こんなとこにレオが…」


「ああ、もう少し奥に行ったのを見たよ」


サラリと答えるカイルさんの顔を、あたしは訝しげに眺めた。



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