薔薇姫-バラヒメ-
いくら何でも、こんな人気のない静かな場所、レオが行くの?
あたしの疑いの眼差しに気づかず、カイルさんは話し続ける。
「貴族って、ずるいよね。瞳が紅いってだけで、優遇されてさ」
あたしが足を止めたのにも気づかず、カイルさんは歩を進めた。
「レオだって、周りからちやほやされて。どうせろくな魔族じゃ…メイちゃん?」
そこでやっと気づいたのか、カイルさんはあたしを振り返った。
あたしは、その顔を冷たく見据えた。
「どうしたの?メイちゃん、レオは向こうに…」
「嘘」
顔をしかめて、「え?」と聞いてくるカイルさんに、あたしはもう一度言った。
「…嘘でしょ」
「嘘って、何が?」
しらを切るカイルさんを、あたしは睨みつけた。