薔薇姫-バラヒメ-
「メイッ!!」
静かな林の中で、大きな音が鳴り響いた。
あたしのすぐ目の前にいたカイルさんは、遠くで倒れていて。
代わりに、あたしの目の前に見えるのは、あいつの後ろ姿。
「メイッ!! 平気か!?」
振り返るその顔を見て、あたしは呟く。
「………レオ?」
何だか信じられなくて、問いかける形になった。
レオは、そんなあたしを見て、くわっと口を開いた。
「お前なぁ!! 急に消えんなよ!!」
「…気づいて、たの?」
「はぁ!? 気づくに決まってんだろ!」
たったそれだけのことが、何だか嬉しい。
けどレオは、相当お怒りの様子。
「落下の次は誘拐か!? お前、おてんばなのもいい加減にっ…」
レオの言葉が途中で途切れたのは、きっとあたしのせいだ。