薔薇姫-バラヒメ-
その時だった。
「…――――!!」
…本当に、本当に微かに。
メイの声が聞こえた気がした。
考える間もなく、俺はその声が聞こえた方に走る。
林の奥の方に、ふたつの影が見えた。
ちなみに魔族は、普通の人間よりも五感が優れている。
俺の中の何かが、あれはメイだと確信させた。
「―――レオの方が好き!!」
その声が聞こえた瞬間、俺は危うく転びそうになった。
何なんだ。
一体、何を話してるんだ?
その影に近づくに連れて、男がいることに気づく。
俺は知らずのうちに眉をひそめた。
…あいつ…どっかで…
「レオをっ…悪く言わないでッ!!」
悪く…言われてるんだ?俺。