ハスキー
『いらっしゃっいませ―――』
高級感漂うジャズが流れ出し,話し声も大きくなってきた。
照明がキラキラ輝く。

ここがあたしの仕事場。
俗にいうホステス。
うちのお店は『高級』ってつくぐらいの店なのだ。
ヨシハラの家はなかなか金持ちで,何の仕事をしているのか知らないが,この店舗もヨシハラの家のだ。

働いてることは誰にも言っていない。
というか言う人もいないが。


『ねおん―!ご指名3番テーブル!!』
ヨシハラの声がかかった。


『お久しぶりですぅ,山下さ―ん。
ねおん会えなくて淋しかったんですよぉ。』
作り笑いにお世辞に軽いボディタッチ。
これくらいでそこらのバカどもはひっかかる。
『本当だね―僕もねおんちゃんに会えなくて毎日....』

『山下さんってばぁ(笑
ねおんうれしいなぁ....』

まぁこんな具合であたしの仕事は進む。
客に余分にボトル開けさせて。
最後にはちょっと寂しそうに手をふりながらも笑顔でさようなら。
こうすることでまた客の足を向かせる。

ヨシハラに教え込まれて完璧にマスターした。
いつも指名を8組受ければあたしのその日のお勤めは終わり。

8組目をさばくころにはもう2時を過ぎる。
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