ハスキー
起きた時,あたしは泣いていた。

夢。
真っ暗な夢。
今,あたしはもう戻れない世界にいるのだろうか。
時計を見ると6時20分過ぎを指していた。



いつも通りに支度をして家をでる。
今日も1番遅く店に到着。
またみんなと会話を交わし,店長とじゃれあい。


―――開店の時間だ。
貼付けた笑顔を振り撒きボトルをどんどん開けさせた。
普通なら限度を決めているが,なぜか今日は....。
『おい,ナル。』
耳元で呼ばれた。
なんとも言えない表情のヨシ店長があたしを呼んだ。
ちょっとすいませぇん,高い声で断りを入れて店長についていく。


『....ナル,お前今日は帰れ。』
ヨシ店長が今度は呆れた顔であたしに言った。
『お前,今日は何本ボトル空けた?』
【普通】のあたしならいくら分空けさせたかなんて余裕で覚えている。

『ちょっとうっかりし『お前ウソ下手。』
ヨシ店長の鋭い指摘。
本当ヨシ店長には嘘をつけない。
他の人は簡単に騙せるが。
『何かあったのか?』
ヨシ店長の瞳があたしの姿を捕らえて離さない。
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