【長編】Sweet Dentist
響先生がもし…亜希さんと付き合ったらあたし冷静でいられるだろうか。

もし…もし、二人が結婚するって言ったら?


バカね。響先生だっていい年なんだもん。
あたしみたいな高校生と違って、いい加減身を固めなくちゃいけないわよね。
真由美さんだっけ?婚約者を名乗る女性もいるくらいだし、いつかもホテルでお見合いしていたわよね。

やっぱり、先生だって早く結婚したいんじゃないかな?


『応援してやるよ。』

あの響先生の言葉はあたしの胸に重く沈んだ。

本当なら嬉しい言葉の筈なのに、素直に喜べない理由をあたしの心は知っている。

運良く大会で優勝して留学できても、帰ってきたら先生は誰かと結婚しているのかもしれないと思うと、苦しくて留学なんてどうでも良いとさえ思えてしまう。

先生はあたしがいなくなったって何も感じないんだろうな。

そうだよね。当たり前じゃない。

12才も年の離れたあたしは患者でなくなった今、響先生に繋がるものを何一つ持っているわけでもない。

もしあるとしたら、聖良さんたちのウェディングケーキくらいだろう。


あたしなんて対象外だもの…。

思っただけで胸が苦しくなって涙が溢れてきてしまう。


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