【長編】Sweet Dentist

「千茉莉ちゃんを留学させてみませんか?」

待ち合わせたホテルのロビーで俺の顔を見るなり亜希はそう言った。


いきなりの事に言葉を無くす俺に、亜希は笑って著名なパティシェを紹介したいと言いだした。

「千茉莉ちゃんには才能があるって聖良から聞いたんです。
パリにあたしの知り合いのパティシェがいるんですけど…
千茉莉ちゃん留学してみる気は無いかと思って。」

突然の事で思考がついて行かない。

大会に優勝したら留学するとは聞いていたが、それはあくまで優勝したらの話だった。

だが、今亜希が持ってきた話は、千茉莉にその気さえあればいつでも留学ができるという事だ。

何て言ったらいいのか言葉が見つからない。

この話を聞いたら千茉莉はなんと答えるだろう。

夢を叶える為にあの輝く天使の翼を広げて飛び立ってしまうんだろうか。


あの日の亜希のように…。


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