【長編】Sweet Dentist
「聖さんも結構亜希で苦労してるんだな」

「なんですか、それ!酷いですね」

「本当じゃないか。聖さんに同情するな俺。」

「んもう!先輩ったら。…でも、すれ違って時間を無駄にするのは良くないですよ。
あたしたちがいい例です。響先輩も千茉莉ちゃんが好きならちゃんとしたほうが良いですよ。後悔はしたくないでしょう?」

亜希の言葉に俺は何も言えなかった。


聖さんが躊躇した気持ちもわかる気がする。

もし千茉莉が俺のために留学を止めたり、可能性を諦めたりする事があったら…きっと耐えられないだろう。

聖さんも亜希の才能の芽を摘むような真似をしたくないと思って気持ちを告げられなかったんじゃないか?

夢へと真っ直ぐに進む亜希の障害になることの無い様に、気持ちを押し殺して、兄と言う名の仮面をつけてずっと見守っていたんだと思う。

「二人が想い合っているのは誰が見ても明らかなのに…
いつまでもモタモタしていたら誰かに盗られちゃいますよ。
千茉莉ちゃん可愛いんですから。」


想い合っている…?


千茉莉が俺を好きだって言うのか?



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