【長編】Sweet Dentist
「―――本当だよ。そろそろ限界なんだけど
…いい加減に返事をもらえないかな亜希。」
突然聞き覚えのある声に顔を上げると、聖さんが苦笑しながら腕組みをして立っていた。
「俺だって、鋼鉄製の心臓を持ち合わせているわけじゃないんだ。
いい加減に返事をもらわないと心臓発作を起こしそうだよ。
それとも俺のプロポーズ断って響と逃げるつもりか?」
冗談を言いながらチラリと俺を見る聖さんの視線に、僅かに嫉妬が含まれているのを感じて苦笑してしまう。
まあ、気持ちはわからないでもないな。
俺だって宙の奴が自分を千茉莉の彼氏だと言いやがった時は嫉妬したからな。
ましてや亜希から忘れられない初恋の人だと聞かされていた俺が相手なら、嫉妬するなって言うほうが無理だろう。
「亜希、お前のんびりしてたら聖さんが痺れ切らしてどっか行っちまうぞ。俺に後悔するなって言う前に自分が後悔する事になっていいのか?」
俺は笑いながら席を立つと、聖さんに場所を譲った。
「邪魔者は退散しますよ。
聖さん…亜希を幸せにしてやって下さい。」