【長編】Sweet Dentist
「亜希。千茉莉に留学の話をしてやってくれないか?」

亜希と聖さんはハッと息を飲んだ。

「良いんですか?先輩はそれで…。」

心は雲ひとつ無い青空のように澄み渡っていた。

俺の選ぶべき道が見つかった。

それが間違っていない事を心が確信している。


亜希の言葉に微笑んだ俺は穏やかな顔をしていたに違いない。


「ああ、いいんだ。俺は両方手に入れたいんだよ」


俺の言葉に聖さんは気持ちを悟ってくれたようだった。

ニヤッと意味ありげに笑って「そっか」と言うと、訳がわからない顔をしている亜希の肩を抱いてエレベーターへ向かって歩き出す。

「ちょっ…聖さん?響先輩とまだ話しがっ…」

「響は大丈夫だ。それより亜希は俺に言う事があるだろう?
ほら、部屋に戻るぞ。歩かないなら抱いて部屋まで行ってやるけど?」

抵抗して歩みを止めようとする亜希にそう言って綺麗に笑うと、本当に亜希を抱き上げた。
いきなりの行動に真っ赤になってジタバタする亜希と、それを物ともせずズンズンエレベーターへ向かう聖さんに笑いが込み上げてくる。

エレベーターの前で聖さんは頑張れよと言って軽くウィンクをした。

俺もウィンクを返して軽く手をあげる。


きっと聖さんも俺と同じ事を考えた事があったんだろうな。


ああ、絶対に手に入れて見せるよ。


俺はどちらの千茉莉も欲しいんだ。


夢を叶えた千茉莉と


俺を愛してくれる千茉莉を




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