【長編】Sweet Dentist
はあ…
小さく溜息をつき携帯を開くと千茉莉の番号を表示する。
指をかけては躊躇う仕草をもう何度繰り返しているだろう。
あの夜、亜希に会って心に決めた事を決行しようとしたまでは良かったが…。
自分の気持ちを認めてしまうとやたらと意識してしまうもので、千茉莉に電話をかけるという行為は思っていた以上に難しい課題だと痛感させられた。
とにかくやたらと気持ちが昂ぶって、携帯を握る指が思いがけず震えていたり、ボタンを一つ押すだけなのに思い切れず、もうどの位時間を費やしているかわからないくらいだ。
好きな女への初めての電話。
…これってすげぇ緊張するかも。
考えてみたら自分から好きな女に電話をするなんて事初めてじゃないか?
うわ!俺って意外とオクテなのか?
…って、んなこと考えている場合じゃない。
逃げるわけには行かないんだ。
はあ…
最後の溜息を吐き出し、意を決すると俺は思い切って発信ボタンを押した。
呼吸を整えて、千茉莉が出てくれることを祈る。
繋がる前からドキドキして心臓が壊れてしまいそうだ。
震える唇で俺のキスを必死に受け止めたあの夜の千茉莉を思い出す。
俺は自分の進むべき道を決めた。
千茉莉…おまえに俺の気持ちを伝えよう。
おまえは俺を受け入れてくれるだろうか。