【長編】Sweet Dentist
~~♪
聞き覚えのある音楽にビクッと体が跳ねる。
表示された名前に手が震えるのがわかる。
大きく深呼吸して涙を拭うと思い切って携帯に出た。
「もしもし…。」
『千茉莉?俺だ。話があるんだけど…少し時間をもらえないか?』
「…うん、あたしも話さなくちゃいけないことがあったの。中央公園で待ち合わせで良い?」
『ああ、待ってるから。今から30分後だ。OK?』
「OK、じゃあ後でね」
―――ピッ!
携帯を切リ、すぐに着替えて出かける準備を始める。
泣き続けていたから目が充血して瞼も腫れている。
「少し化粧でもしていかないと泣いていたのがバレちゃうね」
そんな顔を見られるわけには行かない。
理由を聞かれて上手く説明できる自信は無いもの。
薄化粧をして白いパーカーにジーンズといった軽装で鏡に向かう。
あの夜とは比べものにならないくらい子どもっぽいあたし。
でも、これが本当のあたしの姿だ。