【長編】Sweet Dentist
【第3章】10月11日(火曜日)
高校のときの誠先輩の恋人との見合いの話が来た時は驚いた。


誠先輩と俺の見合い相手の岩本さんはもう随分長い付き合いのはずだった。
それなのに煮え切らない誠先輩はズルズルとプロポーズを先延ばししているのは知っていた。

でも、まさか本当に彼女が見合いをするんて思わなかった。
俺は誠先輩にすぐに連絡を入れて見合いの日と場所を教えた。それまでにプロポーズするか、もしくは本当に別れてしまうのか。
そこまで踏み込めない俺は、とりあえずお膳立てだけはしてやったんだ。

先輩は結局当日の朝まで俺に連絡をくれなかった。
聞くところによると10月7日はふたりの付き合いだした記念日とかで、その日の朝プロポーズして見合いを止めるつもりだったらしい。

ところが彼女のほうが置手紙をして早朝に出て行ってしまった。
俺との見合いの為に、誠先輩と別れる決意をしたらしい。


…何やってんだよ。誠先輩。

そういえば高校時代、生徒会長だった誠先輩は、どっか抜けていたり呑気だったりで、結局副会長の龍也がほとんど取り仕切っていた事を思い出す。

ここぞと言う時は思い切りよく動くくせに、計画性が無いというか、のんびりしているというか…。

そんな経緯もあって、見合いの日誠先輩は彼女の岩本さんを奪還しに来た。

…ったくおせぇんだよ。


まあ、その後先輩と岩本さんはハッピーエンドで俺はキューピットになったわけだけど♪

先輩たちをくっ付けるというミッションをこなした俺は、『ヤボ用があるから行くわ。』と言って、見合いの場を後にした。


そう、『ヤボ用』はたぶんまだ、カフェにいるだろうと確信して…。



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