【長編】Sweet Dentist
ベッドルームのドアを開けると、腕の中の身体が電流でも走ったかのようにビクッと跳ねた。

心拍数が限界まで一気に跳ね上がっているのが、大きく上下している胸の動きで分かる。

緊張と恥ずかしさで身体が小刻みに震える様子はまるで小動物だ。

宝物を扱うようにそっとベッドに寝かせると、その上に覆い被さるようにして、両手を絡めシーツに縫いとめた。

ふわふわした茶色の柔らかな髪がベッドに広がって、普段は髪に隠れている首筋の白さが俺を誘うように色香を放っている。

その部分に引寄せられる様に口付けると身体を震わせた。

「や…だ、ダメだよ。あたしたちまだ出会って1ヶ月だもん。それに告白したその日になんて、あたしそんなに軽くないもん」

身持ちは硬いって事か。

それは嬉しい事だけど、俺には許して欲しいなぁ。

「出会って1ヶ月? 違うぞ、もう12年も前に出会ってるだろう? お互いの心のずっと深いところに住んでいたんだ。再会してからの時間なんて関係ないさ」

有無を言わせない俺に対して、まだ顔をプルプルと振って否定する千茉莉。

気持ちも解らないでは無いが、一度勢いのついた気持ちってのは、なかなか止まらないんだよな。

だが12も大人の俺より千茉莉のほうがよほど冷静っていうのも悔しいかもしれない。


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