【長編】Sweet Dentist
【第10章】11月26日(土曜日)
暖かい日中の名残を僅かに残す、心地良い秋の夕刻の風が頬を撫でる。

この季節独特の滲むような大きな夕陽がゆっくりと西の彼方へと還ろうとしていた。

まるで先ほどまでの幸せな時間の終わりを告げられているようで、ほんの少し寂しさを覚える。

楽しい時間も幸せな時間も、永遠には続かない。

だからこそ、素敵な思い出として残るのだということは解る。

解るけど…今日の素敵な時間をもう少しだけ噛み締めていたかった。

「ねぇ…聖良さん綺麗だったわねぇ」

今日の結婚式の幸せな花嫁を思い出し、あたしの肩を抱いて歩調を合わせてくれる、長身の恋人に視線を送ると、大好きなグレーの瞳が細められる。

夕陽に紅く染まる金髪が、初めて出逢った日の事を思い出させて、一瞬ドキッとした。


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