【長編】Sweet Dentist
もう、俺は本気で誰かを愛する事が出来ないのかもしれない。
そんな風に思っていたときに、暁から杏ちゃんの知り合いの女の子の治療をしてやってほしいとの内容にメールが入った。
気乗りはしなかったが親友の暁の頼みだし、他ならぬ杏ちゃんの知り合いだという。
「とりあえず話は聞くよ。治療するかどうかはその娘の話を聞いてからだ。」
俺は暁にそう釘を刺した。
治療が終わったら付き合って下さいなんて言われたら、たまったもんじゃないからな。
そう思っていたんだ…。
そう、杏ちゃんから千茉莉の話を聞くまでは…
「響さん。千茉莉ちゃんは歯医者さんが大嫌いなの。もし、受けてもらえるなら優しく治療してあげてね。」
杏ちゃんのセリフを思い出す。
「杏ちゃんとその娘とは長い付き合いなのか?」
「うん、大学時代に家庭教師をしていたの。知り合った頃はまだ中学生だったけど、すごく優しい娘でね、あたしが疲れた顔をしているといつもキャンディとか甘いものを出してきて言うのよ。
『疲れたときや悲しいときには甘いものが一番ですよ』…って。口癖みたいにね。」
「……へぇ…」
なんだろう心を揺さぶられるようなこの感じは…
「ほら、駅前にある洋菓子屋さん【SWEET】ってあるでしょう?あそこの一人娘なの。」
【Sweet】と聞いて、亜希の最後の日の懐かしい思い出が蘇ってくる。あの店の娘なのか。
「だからお菓子作りが得意でね。よく作ってくれるのよ。彼女…人の心の傷にすごく敏感って言うか…。不思議な娘なの。」
「不思議な娘?」
「そう、例えばあたしが元気なかったり、暁が仕事の事で悩んでいたり、どこか気分がブルーな時に必ずそれを知っていたように『元気が出ますように』ってお菓子を作って来てくれるのよ。
それがまた、すごく美味しくてね、一口食べると元気になれるって言うか…。
とにかくすごいパワーがこもったお菓子なの。千茉莉ちゃんの心が込められているなあって、すごく心が温かくなるのよ。」
「ちまり…千茉莉っていうのか?その娘。」
「そう、神崎千茉莉ちゃん、あれ?あたし、名前教えなかったっけ?」
そんな風に思っていたときに、暁から杏ちゃんの知り合いの女の子の治療をしてやってほしいとの内容にメールが入った。
気乗りはしなかったが親友の暁の頼みだし、他ならぬ杏ちゃんの知り合いだという。
「とりあえず話は聞くよ。治療するかどうかはその娘の話を聞いてからだ。」
俺は暁にそう釘を刺した。
治療が終わったら付き合って下さいなんて言われたら、たまったもんじゃないからな。
そう思っていたんだ…。
そう、杏ちゃんから千茉莉の話を聞くまでは…
「響さん。千茉莉ちゃんは歯医者さんが大嫌いなの。もし、受けてもらえるなら優しく治療してあげてね。」
杏ちゃんのセリフを思い出す。
「杏ちゃんとその娘とは長い付き合いなのか?」
「うん、大学時代に家庭教師をしていたの。知り合った頃はまだ中学生だったけど、すごく優しい娘でね、あたしが疲れた顔をしているといつもキャンディとか甘いものを出してきて言うのよ。
『疲れたときや悲しいときには甘いものが一番ですよ』…って。口癖みたいにね。」
「……へぇ…」
なんだろう心を揺さぶられるようなこの感じは…
「ほら、駅前にある洋菓子屋さん【SWEET】ってあるでしょう?あそこの一人娘なの。」
【Sweet】と聞いて、亜希の最後の日の懐かしい思い出が蘇ってくる。あの店の娘なのか。
「だからお菓子作りが得意でね。よく作ってくれるのよ。彼女…人の心の傷にすごく敏感って言うか…。不思議な娘なの。」
「不思議な娘?」
「そう、例えばあたしが元気なかったり、暁が仕事の事で悩んでいたり、どこか気分がブルーな時に必ずそれを知っていたように『元気が出ますように』ってお菓子を作って来てくれるのよ。
それがまた、すごく美味しくてね、一口食べると元気になれるって言うか…。
とにかくすごいパワーがこもったお菓子なの。千茉莉ちゃんの心が込められているなあって、すごく心が温かくなるのよ。」
「ちまり…千茉莉っていうのか?その娘。」
「そう、神崎千茉莉ちゃん、あれ?あたし、名前教えなかったっけ?」