【長編】Sweet Dentist
あれほど瞳を輝かせて夢を語っていた千茉莉が、俺の為に留学を躊躇するなどあり得ないだろうと思っていた。

だが亜希は、このままでは大会での優勝はおろか、実力も発揮できないかもしれないと危惧していた。

亜希の話の全てを鵜呑みにした訳ではなかったが
半信半疑で披露宴の帰り道にさりげなく留学の話を切り出した時、千茉莉の話し方に歯切れの悪いものを感じ、その可能性を否定できなくなった。

初めて出逢ったあの日、千茉莉の背に見た金の翼。

あれは夢に向かって大きく羽ばたく夢の翼だった。

飛び立つ前に俺の為に羽ばたく事を諦めるなんて…

そんな事をさせちゃいけない。

そう思った俺は、とっさの判断で会場までは行けないと口にしたのだ。


< 248 / 550 >

この作品をシェア

pagetop