【長編】Sweet Dentist
「あのね、宙。あたし、少し前までだったら響先生が行くなって言ったら行けないと思ってたの。
だけど…このままのあたしじゃ彼の隣に相応しい女性にはなれないのよ。
宙があたし達を心配してくれるのは嬉しいけど、あたしは自分が自分らしく、そして彼に相応しく成長する為にフランスへ行きたいと思う。
響先生に会えなくて寂しくて泣いちゃう日もあるかもしれないけど…
でもだからこそ、一日も早く一人前になって帰国できるよう努力したいと思うの」

千茉莉は改まった様子で俺と向かい合うように立つと、真っ直ぐに瞳を見つめてきた。

「…響さん…初めて出逢ったあの日、あたしにこの道を示してくれて…本当にありがとう」

深々と頭を下げる千茉莉に成長を感じて胸が熱くなり

柔らかな髪をクシャ…と撫でた。

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