【長編】Sweet Dentist
一瞬驚いたような顔で俺を見つめ、照れたように頷く。

「嬉しい…気付いてくれるなんて思わなかった」

「俺を誰だと思っているんだよ。気付かないわけないだろ? …あれは俺達が12年前に出逢った日の風景だよな?」

「うん…感謝してるって伝えたかったの」

「…伝えたかったのはそれだけ?」

「あのね…ずっとずっと大好き…って…」

「よく言えました。…俺も好きだよ」

ほんのりと桜色に頬を染め、幸せそうに微笑む千茉莉。

釣られて紅くなりそうな顔を見られたくなくて―…

身体を屈めると染まった頬を隠すようにして耳元で囁いた。


「俺のほうこそ…ありがとうな…千茉莉」


俺に安らぎを教えてくれて―…

俺と出逢ってくれて―…

俺を愛してくれて―…

< 338 / 550 >

この作品をシェア

pagetop