【長編】Sweet Dentist
「大会で作るお菓子のこと…
あたしらしいお菓子ってまだわからなくて。
この間もホテルへ行って勉強してきたけど、今ひとつ自分の中でこれって思えるものに出会えないの。
考えていたら夜も眠れなくって…」

「ホテルってあの日か。
千茉莉…おまえこの間のヤツまだ、ファーストキスだと思って怒ってるのか?」

ただでさえこんな至近距離で顔をつき合わせて話しているのに響先生は突然忘れていたことを口にした。

益々心臓が早鐘を打ってしまう。

「え…あ、ぃゃ…もう怒ってないです…」

この距離でこの間の頬へのキスのことを思い出させないでほしい。

あの後散々空に愚痴ったあたしは、逆に空に説教されてしまった。

『あんな美形の先生とお知り合いで、キスまでしてもらって文句言うなんてどう言う事よ?
大体ホッペのキスなんて子どもだってするでしょう?
あんなのファーストキスだ何ていわれたら先生だって困るわよ。
小学生より悪いじゃない。もっと大人になりなさいよ。』


ですって…


はあっ…空の美形好きには本当に困ったものだわ。

それでも、彼女の言う事も確かかもしれないと思った。


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