【長編】Sweet Dentist
響先生くらいの大人なら頬にキスなんて特別な感情がなくてもできるんだと思う。

…でも、しょうがないじゃん。あたしはまだ、お子ちゃまなんだから…。

そんなに簡単に割り切れなかったんだもん。

でもね、冷静になってみたら思ったの。温かくて優しくて柔らかいキスだったなって。

あの時はパニクったけれど、後で考えると決して嫌じゃなかった。

「もう怒ってないなら本当のキスを教えてやろうか?今日が最後だからな」

ドッキーン!なっ…何を言い出すのよ。

「突然何て事申し出てくれるのよ。
冗談もいい加減にして。とっとと治療を始めておしまいにして下さい」

意地を張って強い口調で拒絶するけれど、本当は胸が痛くて今にも発作を起こすんじゃないかと思っていた。

「そう?俺のキスは高いんだけどな…おまえ後悔するぞ。素直に目を瞑れば?」

「…いや、しませんって」

そうは言ってみたけれど
本当はうん、って頷いて瞳を閉じそうになった自分がいた事に衝撃を受けていた。



なんで…あたし素直にキスを受け入れてもいいなんて思ったんだろう。







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