【長編】Sweet Dentist
響さんが顔を上げるまで、パパもママも静かに見守っていてくれた。

長い長い時間、心の奥底に抱え閉じ込めていたものを解き放つのは、痛みや苦しみを伴うものなのかもしれない。

急げば傷つき、血が噴き出す。

時には長い間に溜まった膿が流れ出すこともあるだろう。

だけどそれを乗り越えて、全てを吐き出したとき、彼は本当の意味で過去を乗り越えお母さんと向かい合うことが出来るのだと思う。

だから、あたし達は静かに待った。

響さんが自分の中に息づくお母さんと向き合い、語り、そしてそれを受け入れるまで…。


やがて彼はゆっくりと顔を上げて

パパに頭を下げた。


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