【長編】Sweet Dentist
「それにしても、オッサンは何をしてたんだ? 彼女が響君の中に残したものはこんなにも沢山あるのに、それをちゃんと教えてやらなかったなんて…」

あたしがぼんやりと考え事をしている間に、いい加減お酒が回ってきたパパの怒りは『オッサン』なる人物に向かっていたらしい。

慌てて会話に参加しようと、すかさず
「オッサンって誰?」
と質問した。

「響君のお父さんだよ。
写真の一枚も無いなんて、どう考えてもおかしいじゃないか?
子供に母親の思い出を与えないなんて、オッサンのヤロー父親として最低だな」

「父親はいなくなった母親とそっくりな俺のこの容姿を嫌っていたんでしょうね。
仕事が忙しい事を理由に、俺を避けていましたから。親父と遊んだ記憶なんてありませんし…」

「響君を避けるって?
俺の知っているオッサンだったら、そんな事ありえないと思うぞ?」

パパは、響さんのお父さんがどれほど家族を大切にしていたかを、身振り手振りで語り始めた。

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