【長編】Sweet Dentist
当時、響さんのお父さんは、中学生だったパパの目から見ても、とても家族を大切にしていたらしい。

愛妻家で有名な彼は、ちょっとでもパパとアリスさんが二人きりになるのが不安で、しょっちゅう様子を見に来ていたそうだ。

だから響さんがアリスさんの膝にいるのを見て、安心して仕事に戻るというのは、ほぼ毎回の恒例行事。

おまけにパパがそれをからかうように「オッサン暇だなぁ?」などと言うものだから、毎回デコピンをされるのも恒例行事だったそうだ。

「ったく、あの人は、俺が君とアリスさんと三人でいると、ヤキモチを妬いて必ず邪魔をしに来たんだ。
27歳にもなるいい大人が嫉妬して12歳も年下の俺にムキになって、デコピンしてくるんだからガキみたいだよな?」

まるで痛みを思い出すかのように、おでこを擦る仕草をするパパを見て、先日の宙を思い出した。

…デコピン…って
そういえば確か、響さんも宙にデコピンしていたわよね。

12歳の年の差と、パパ達二人の行動…

おまけにパパが響さんのお父さんを『オッサン』と呼ぶことも…

宙が時々響さんをそう呼ぶのを知っているだけに…

なんだかパパ達の関係が、宙と響さんに重なって妙な気持ちになった。


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